鯉濃(9)

 この人は普通では無い、それでもいい、黙って聞こうと温泉の湯を顔にかけて、次の言葉を待った。
  「祈りました、毎日、毎日、祈りました。そしたら仲間から聞いたのです、貴方がここに来るということを。きっと鯉を、鯉濃を注文すると。そうすれば番頭さんが釣りに来る。そう、番頭さんが来ました。他の鯉に邪魔をさせないようにと仲間が協力してくれて私をその場に案内してくれました。そして今日、貴方の夕食の膳に出たのです。鯉濃として、そして私は貴方の身体の中で連れ合いに会うことができたのです。」