鯉濃(10)


  話に驚いたのか、のぼせてしまったのか、めまいを感じ、ふらついた。

 すると湯煙の中をゆらゆら近づいてくる女の姿が写った。女は桶に入った水を頭にかけた。水の冷たさに我に返って見ると、女の下半身は美しい鯉だった。

 「ありがとうございました。もうすぐ雷雨になります。」
   窓が大きく開いた。鯉はするっと窓を大きく開けると湖に大きな水飛沫を上げた。その水飛沫は満月を消し去り、天地は暗くなり雷が起こる。やがて雨は二つの雨柱となり、その中を二匹の鯉が駆け上がっていった

終わり